「陸王」は、「半沢直樹」や「下町ロケット」など、数々のヒット作を生み出している池井戸潤さん原作で、開始前から期待値の高かったドラマです。
埼玉県行田市にある老舗足袋屋「こはぜ屋」の四代目社長の宮沢紘一(役所広司)が、会社存続のため、これまで培った足袋の製造技術を応用して、裸足感覚を追求したランニングシューズ(陸王)の開発に着手し、紆余曲折しながら大ヒット商品化を目指す企業再生ストーリーです。
第1話では、こはぜ屋の逼迫した現状と、陸王の試作品完成、そして今後キーマンとなる茂木選手(竹内涼真)の豊橋国際マラソンでのアクシデントと、初回とは思えないくらい、見所が凝縮された内容でした。
特にポイントとなっていた、走ることに対するこだわりに注目したいと思います。
制作チームの本気がすごい!リアリティの追求
池井戸潤さんのドラマと言えば、リアルすぎる描写が特徴的ですが、公式情報によるとドラマに登場するこはぜ屋や銀行、ランニングシューズなどには正式なモデルは存在しないようです。
陸王に関しては、撮影協力という形で参加されている「きねや足袋」で販売されているランニング足袋「KINEYA MUTEKI」をベースにして、大手スポーツメーカーの「ミズノ」が製作されているらしいです。陸王は物語のキーアイテムなので、本物のランニングシューズを作っている会社に依頼しないと、ドラマのリアリティを表現できないという制作チームのこだわりには脱帽です。
物語の中でも、マラソンシーンは特に力を入れているように感じられます。
大勢のエキストラを募って、本物さながらのマラソンシーンはとても迫力がありますが、このランナー達のキャスティングにも、制作チームのこだわりが見られます。
メインキャラクターのダイワ食品のランナー、茂木を演じる竹内涼真さんは、サッカーの経験者で、ドラマにはオーディションで選ばれましたが、演じるにあたって10キロ近くの減量をして撮影に臨まれたそうです。
アスリートとしての見た目にもこだわるプロ根性は素晴らしいと思います。
同じくダイワ食品の平瀬を演じる和田正人さんは、元日本大学陸上競技部の主将で、箱根駅伝に2回出場経験があり、今回の役にはぴったりだと思います。
そして、ダイワ食品のエース・立原を演じる宇野けんたろうさんは、本業はお笑いコンビげんき~ずという芸人さんですが、本業よりマラソンの仕事のほうが多いという、芸能界きっての本格ランナーの方らしいです。
茂木のライバル役、アジア工業の毛塚を演じる佐野岳さんは、仮面ライダーの主演を努めたという点では竹内さんと共通点がありますが、TBSの『最強スポーツ男子頂上決戦』で総合優勝3回、『オールスター感謝祭』の赤坂5丁目ミニマラソンのコーナーでも優勝経験があるスポーツ男子としても有名な俳優さんのようです。
このように、スポーツ経験者を沢山起用することで、普通の俳優さんだけでは出せない、あの臨場感が生まれていると思います。
この完成度の高さについては、注目している人も多いようです。
ランニング足袋とは?
そもそも、このランニング足袋という聞き慣れない商品、ドラマの中では、「怪我をしにくい、裸足感覚で走れるランニングシューズ」という説明がありましたが、実在しているようです。
きねや足袋の「KINEYA MUTEKI」の商品説明によると、「伝統的な製法で仕上げた足袋そのものに柔らかくグリップ力の高い薄さ5mmの天然ゴムソールを手縫いで縫い付けた、新しいタイプの履物」だそうです。
ソールにクッション材を使用しないで、限りなく素足感覚に近づけ、人間本来の走り方をマスターする矯正ツールの役割も果たすというところは、陸王のコンセプトとリンクしていると思います。
陸王に出てくるシューズに近い物は実売されてるみたいね。公式モデルではないと思うが。
|池井戸潤「陸王」のモデルは、きねや足袋の「MUTEKI」だった! https://t.co/tzeaZgG89N @masslife55#陸王— 30 (@Hetare3) October 15, 2017
本当にあるランニング足袋【きねや無敵!】
池井戸潤さんが取材に来られて、そのときには構想が決まっていた。
『陸王』で足袋製造の技術指導も行っている『きねや足袋』代表取締役の中澤貴之氏。https://t.co/EPTiI8C0O7https://t.co/QkKswGBF0N pic.twitter.com/cRVAFxlM8x— NGT諜報員 (@ngt_Agent) December 3, 2017
陸王は本格的なランニングシューズとして改良を重ねていきますが、本来のランニング足袋は、矯正用という役割が大きいようなので、意味合いとしては「怪我をした選手用に提供する矯正用シューズとしてならいける、試作段階の陸王」のほうが近いと思います。
先代がランニング足袋の開発に失敗したのは、ここから一歩抜け出せなかったせいだと思います。
やはり、足袋に少し改良を加えただけのランニングシューズとは呼べない代物は、中途半端な感じが否めないと思います。
一歩上を目指そうとすると、そこには多大な努力と資金が必要になります。
困難が大きいほど、それを乗り越えられた時の達成感は素晴らしいものになるはずです。
これこそが、陸王の一番の醍醐味と言えると思います。
第1話は、現在のこはぜ屋の立ち位置と、ランニングシューズ業界に殴り込みをかけるという、宮沢の大きな覚悟が描かれていました。
銀行やライバル社アトランティスとの対立、宮沢と息子大地(山崎賢人)との確執、知名度と実績の壁という、様々な問題も浮かび上がってきました。
ラストでシルクレイというキーアイテムも登場し、少し希望が出てきたという展開になってきたので、陸王が無事にバージョンアップできるのか、今後に期待したいと思います。